腹痛とは
腹痛とは、お腹に感じる痛みの総称です。
日常で経験することの多い症状の1つですが、腹痛の原因は多岐にわたります。
腹痛の原因は、胃や腸だけでなく、すい臓や胆嚢、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、肺、心臓、大動脈などのさまざまな臓器の異常によって引き起こされます。
お腹の「刺すような痛み」や、「波がある痛み」を経験したことがあるのではないでしょうか?
通常、波がある痛みの場合や、吐き気を伴う場合、胃や大腸の異常の可能性が高いです。
一方で、女性の場合、月経前(生理前)に、女性ホルモンの影響によって、腹痛や吐き気を生じるケースもあります。
腹痛に対して、ロキソニンやボルタレンなどの「痛み止め」を安易に内服しないようにしましょう。
かえって症状が悪くなったり、胃潰瘍を合併してしまうリスクがあります。
痛みで寝れない場合や、日常生活に支障をきたしている場合、早めに消化器内科へ受診しましょう。
腹痛に関して、痛みの種類や対処法などの細かい情報まで、消化器病専門医・内視鏡専門医・胃腸科専門医である院長が、分かりやすく・詳細に解説していきます。
腹痛の種類
おなかの痛みは、原因となるメカニズムから、
①内臓痛、②体性痛、③放散痛の3つに分類されます。
1.内臓痛
内臓が伸ばされたり、痙攣(けいれん)することで生じる痛み。
痛みの部位が不明瞭で、漠然とした痛みが生じます。
痛みには波があるのが特徴です。
自律神経症状である吐き気・嘔吐、発汗、顔面蒼白を伴うことがあります。
お腹がシクシクする、ギューとしぼられるといった鈍い痛みや、焼けるような熱い感覚(灼熱感)を伴う痛みなどと表現されます。
2.体性痛
腹膜や腸間膜などの刺激や炎症による痛み。
刺すように鋭く、持続的な痛みとなることが特徴です。
痛い場所を明確に示すことができます。
急性腹症に多く、緊急手術となる可能性が高い痛みです。
キリキリした鋭い痛みや、ズキズキとした痛みなどと表現されます。
3.放散痛(関連痛)
強い内臓刺激に関連して生じる痛み。
部分的で痛みの位置が明確であることが特徴です。
胆嚢結石の発作で生じる右肩への放散痛、心筋梗塞や狭心症で生じる左肩・首への放散痛が有名です。
じんじんとした痛みや、触るだけでひりひりする痛みなどと表現されます。
胃痛の種類 | 1.内臓痛 | 2.体性痛 | 3.放散痛(関連痛) |
---|---|---|---|
部位 | 漠然としてる | 明確にわかる 指し示せる | 明確にわかる 指し示せる |
持続の有無 | 波がある | 持続的 | 持続的 |
特徴 | シクシク、焼けるような痛み、チクチクする痛み | キリキリした痛み、ズキズキした痛み | じんじんした痛み、ひりひりする痛み |
その他 | 吐き気、発汗、顔面蒼白を伴う | 急性腹症の可能性が高い | 胆嚢結石や心筋梗塞などで生じる |
また、腹痛発症のスピードが
①急に突然発症、②比較的早い発症、③徐々に発症したかという点も、診断していく上で重要となります。
腹痛に伴う症状
腹痛に伴う症状として、
吐き気・嘔吐、便秘、下痢、発熱、吐血・下血、血便、血尿、体重減少、黄疸、不整脈、動悸、倦怠感などがあります。
どういった症状が伴っているのかを評価することで、病気を絞り込んでいきます。
腹痛で緊急性が高い状態とは?
腹痛に伴い、以下のチェックポイントに該当する症状がある場合、緊急を要する状態である可能性があります。
上記の症状を伴う腹痛は
急性腹症の可能性が高いです。
このような症状を認める場合、救急車を呼ぶことを検討し、すぐに消化器内科へ受診しましょう。
腹痛の検査・診断
腹痛の診断をしていく上で大切なのは、問診です。
患者様から腹痛の状況、腹痛に伴う症状などを伺うことで腹痛がどこからきているのかを、ある程度判断できます。
診断で重要なのは、その腹痛が緊急性の高い腹痛(急性腹症)であるかどうかということです。
「急性腹症」とは、1週間以内に生じた腹痛で、手術などの迅速な対応が必要な病気のことをいいます。
急性腹症の場合、命の危険に関わる状態となることもありますので、注意が必要です。
腹痛を診断していくためには、以下の検査を状況に応じて組み合わせて行います。
- 血液検査、尿検査
- 胃カメラ(胃内視鏡検査)
- 大腸カメラ(大腸内視鏡検査)
- 胸部・腹部レントゲン検査
- 腹部エコー(腹部超音波検査)
- 腹部CT検査・MRI検査
- 心電図
- 心エコー(心臓超音波検査)
血液検査では、炎症、貧血の有無を評価します。
また、胆嚢炎や膵炎などがないかチェックします。
尿検査で血尿や尿路感染の有無を確認します。
逆流性食道炎や胃潰瘍、胃がん、食道がん、胃アニサキス症などを疑う場合、胃カメラを行います。
大腸がん、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性胃腸炎、過敏性腸症候群などが疑われる場合、大腸カメラを行います。
腸閉塞や潰瘍で穿孔(穴があくこと)を疑う場合、レントゲンで評価します。
胆石や胆嚢炎、膵炎、尿路結石、大動脈瘤破裂などを疑う場合、腹部エコーや腹部CTを行います。
すい臓がんや肝臓がん、卵巣や子宮の病気を疑う場合、腹部MRIを行います。
心臓の病気を疑う場合、心電図や心エコーを行います。
実際の胃カメラ動画
実際に口から胃カメラを入れてどのように観察しているかを見ていきましょう。
当クリニックで行っている観察方法をご説明致します。
胃カメラは、腹痛の原因を診断するために、有用な検査です。
腹痛の部位と主な病気
腹痛は痛み部位によって、
- 右季肋部痛(きろくぶつう)
- 上腹部痛(心窩部痛)
- 左季肋部痛
- 右側腹部痛
- 臍部痛(さいぶつう)
- 左側腹部痛
- 右下腹部痛
- 下腹部痛
- 左下腹部痛
の9つに分けられます。
腹痛の部位と主な病気の関係を以下にお示しします。
腹痛を引き起こす病気
腹痛の原因となる病気は、
①消化器の病気か、
②消化器以外の病気か
の2つに分けられます。
以下に、「腹痛を引き起こす頻度が高い病気」の一覧をお示しします。
消化器の病気 | |
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|
消化器以外の病気 | |
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|
なかでも、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、急性虫垂炎、急性胆嚢炎・胆管炎、胆嚢結石、急性膵炎、肝膿瘍、狭心症、心筋梗塞、大動脈破裂、子宮外妊娠、卵巣茎捻転は
急性腹症となりうる病気です。
また、ストレスが原因で、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などがあります。
1つずつ簡単に解説していきます。
消化器の病気
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃のなかの胃液や胆汁が逆流することで、胸焼けやのどのつかえ感、不快感などを認める病気です。
日本人の15〜20%が逆流性食道炎であると報告されています。
ピロリ菌感染の低下、脂っこく高カロリーな食事、高齢化に伴い増加傾向にあります。 また最近ではストレス社会の影響もあり、中高生や20歳代での発症も多く認めます。 逆流性食道炎が続くことで、食道がん(バレット腺がん)のリスクが高くなります。
急性胃炎
急性胃炎は、細菌やウイルスなどの感染により、胃に炎症が起きる病気です。
菌が繁殖した食べ物の摂取や、風邪のウイルスが胃に入り込むことで発症します。
腹痛に特徴はありませんが、下痢や微熱、発熱、嘔吐などを伴うことがほとんどです。
また食べることで痛くなることが多いです。
38℃以上の発熱が認められる場合、抗生物質や点滴が必要となる場合があります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸にできる深い傷のことであり、急性腹症の1つです。
主な原因は、
痛み止めで使用される消炎鎮痛剤(NSAIDs)とピロリ菌感染です。
過労・睡眠不足、イライラ・緊張・不安などのストレスがたまることで発症することもあります。
その他、アルコール度数の高いお酒が原因になります。
胃潰瘍の場合、食後の痛みを伴うことが多く、十二指腸の場合、夜間に痛むことが多いのが特徴です。
十二指腸潰瘍の場合、食事を食べることで痛みが治ったり、軽減されることがあるのが特徴です。
胃アニサキス症
アニサキスとは、魚介類の内蔵にいる寄生虫です。
アニサキス症は、サバ、アジ、イカなどを生で摂取することにより生じます。
アニサキスは、白色の少し太い糸のように見えて、胃のなかでも数日間は死滅することなく生存できます。
アニサキスは、食中毒の三大原因の1つです。
胃アニサキス症では、胃カメラで直接虫体を摘出しない限り、腹痛は数日間持続します。
疑わしい場合は、早めに消化器内科へ受診しましょう。
胃がん
胃がんは、40代後半から発症しやすく、60歳代が発症のピークであり、男女比は2:1と男性に多いという特徴があります。
がんの部位別の死亡数では、胃がんは男女ともに第3位と、依然として高い状況が続いています。
その理由は、胃がんの初期では自覚症状がほとんどないためです。
がんが進行することで、腹痛や貧血、体重減少、黒い便などが生じます。
胃がんの原因として、ピロリ菌感染(萎縮性胃炎)、塩分の多い食事、タバコ、アスベスト、ゴム製品の製造業をされている方などがあります。
急性虫垂炎
虫垂に細菌感染が生じることで起こる病気です。
急性虫垂炎は「盲腸」という名前で広く知られています。
急性虫垂炎の初期では、みぞおちあたりの痛みを生じることが特徴であり、吐き気・嘔吐を伴います。
痛みはみぞおちからお腹の右下(右下腹部痛)へと移動していきます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、胃痛や胃もたれがあるにもかかわらず、検査を行っても異常がみつからない病気です。
また、緊張やストレス、気分の落ち込み、自律神経の乱れ、うつ状態などとの関連があります。
症状としては腹痛のほか、食後のもたれ感や・灼熱感、げっぷ、吐き気、めまいなどが慢性的に生じます。
市販薬の胃薬や痛み止めで改善しないことが多く、治ったと思っても慢性的に症状が続き、日常生活に支障をきたす症状となることがあります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、腹痛やお腹の張り、便秘や下痢が続いているのに、検査で異常が見つからない病気です。
過敏性腸症候群は「ストレスが原因で生じる腸の動きの異常」と考えられています。
日本人の10〜15%は、過敏性腸症候群であるといわれており、男性より女性に多く、20~40歳代に特に多いという特徴があります。
近年、増加傾向であり、中学生や高校生での過敏性腸症候群が増加しています。
不安や緊張をきっかけに突然強い腹痛が起こり、トイレに駆け込むといったことを繰り返します。
市販薬の整腸剤や下剤では改善することが少ないのも特徴です。
腸閉塞(イレウス)
腸閉塞(イレウス)とは、腸がポリープやがんで塞がったり、炎症などで腸が動かなくなることで、便が肛門のほうへ進まなくなる病気のことです。
腸閉塞の症状として腹痛や吐き気・嘔吐、お腹の張り(腹部膨満)などがあります。
腸閉塞と診断された場合、入院の上、絶食・点滴管理を行います。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、細菌、ウイルス、寄生虫・原虫の感染により腸に炎症を生じる病気です。
腹痛、下痢、粘液便、血便、微熱、発熱などをきたします。
通常、症状に対する治療や点滴で改善しますが、状況に応じて抗生物質の投与を検討します。
性感染症が原因で、治りの悪い胃腸炎を起こすことがあります。
この場合、一般的な胃腸炎で使用する抗生物質では、治らないことも多いです。
当院では、性感染症の各種検査・治療を行っております。お気軽にご相談ください。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は、腸を栄養する血管の血流が悪くなることで、大腸に炎症を起こす病気です。
動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、喫煙する方、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の方に多くみられるのが特徴です。
そのほか、便秘、高脂肪食、 生活習慣の乱れ・運動不足・過度のストレスなどが原因となります。
突然の腹痛、下痢、血便・下血を生じます。
憩室炎
憩室炎とは、大腸憩室に便などが詰まることで、血流が悪くなり、憩室に炎症を起こす病気です。
憩室炎により、右下腹部痛や左下腹部痛、発熱、下痢などをきたします。
憩室炎を起こした方の約10〜50%で、憩室炎が再発するといわれており、再発予防が重要です。
急性胆嚢炎・胆管炎
急性胆嚢炎・胆管炎とは、胆嚢・胆管内で胆汁が停滞し、細菌感染が生じて炎症を起こす病気です。
胆嚢炎の原因の多くは胆嚢結石であり、胆管炎は総胆管結石が原因となります。
胆嚢炎・胆管炎では寒気を伴った高熱、上腹部痛(右季肋部痛)、黄疸を認めることが多いです。
胆管炎の初期では腹痛は軽度で、高熱や黄疸だけが出ることが特徴です。
胆嚢炎、胆管炎いずれも重症化すると、命の危険に関わるため、適切な治療が必要です。
胆嚢結石(胆石)
胆嚢結石は、胆嚢のなかにできた石のことです。
腹痛や胆嚢炎を起こすことがありますが、半数以上は無症状です。
40歳以上で、肥満体型、たくさんの子供を産んだ女性(多産女性)に多いことが特徴です。
みぞおちや右上腹部の痛みをきたすほか、右肩への放散痛が生じることがあります。
急性膵炎(すいえん)
急性膵炎は、膵酵素が活性化され、すい臓に炎症を起こす病気です。
重症化すると多臓器不全を起こすこともあり、急性腹症の1つです。
急性膵炎の原因として、アルコール、胆石が多く、30歳〜70歳代で発症しやすいという特徴があります。
強い腹痛と背部痛が持続し、吐き気・嘔吐、発熱、頻脈などの症状がみられます。
急性膵炎が疑われた場合、速やかな検査・対応が求められ、入院加療が必要です。
すい臓がん
すい臓がんは進行が速く、予後が最も悪いがんの1つとされています。
そのため、腹部エコーなどを定期的に行い、病変の早期発見することが極めて重要です。
近年、増加傾向にあり、タバコ(喫煙)、糖尿病、肥満、慢性膵炎、大量のアルコール飲酒がリスクになります。
がんが進行するまで無症状のことが多く、初期症状として腹痛、黄疸、背部痛、体重減少があります。
肝膿瘍(のうよう)
肝膿瘍とは、肝臓の内部に膿(うみ)ができる病気です。
肝膿瘍ができることで、早期から寒気、体の震え、発熱をきたします。
また腹痛や胸痛、咳などの症状を認めます。
消化器以外の病気
狭心症、心筋梗塞
狭心症とは、一時的な心筋の血流低下により、胸痛や胸部の不快感などを生じる病気です。
心筋梗塞とは、心臓の血管が詰まることで、心筋が壊死する病気です。
狭心症では数分〜15分程度、心筋梗塞では30分以上の胸痛・みぞおちのあたりの痛みが生じます。
いずれの病気でも左肩や首へ放散痛を生じることがあります。
また、呼吸困難、吐き気・嘔吐、冷や汗などがみられます。
胸部大動脈瘤破裂
大動脈瘤とは、大動脈の血管の壁の一部が、拡大・突出して瘤(こぶ)を形成する病気です。
動脈硬化や炎症、外傷などが原因で、大動脈瘤が生じます。
大動脈瘤破裂を生じた場合、激しい胸痛・背部痛、吐血・喀血をきたし、ショック状態となり、緊急手術が必要となります。
月経困難症
月経困難症とは、月経(生理)の際に、日常生活に支障をきたすような痛みや吐き気をきたす病気です。
具体的には、生理直前や生理開始とともに、下腹部痛、腰痛、お腹の張り、吐き気、頭痛といった症状が強く認められます。
10歳代後半〜20歳代に多くみられ、妊娠・出産を経験することで症状の改善や消失がみられます。
子宮内膜症
子宮内膜の組織がなんらかの原因により、子宮以外の場所に生じる病気です。
卵巣や腹膜などに子宮内膜が発生しやすく、腹痛や生理痛、慢性的な骨盤痛、排便する際の痛みを生じます。
また、性交痛がみられ、不妊の原因となります。
症状がなく、原因不明の不妊としてこの病気が発覚することもあります。
子宮外妊娠
子宮外妊娠とは、受精卵が子宮以外で着床することであり、妊娠の1〜2 %に発生します。
着床する部位により、卵管妊娠、腹膜妊娠、卵巣妊娠、頚管妊娠の4つに分けられます。
性感染症や、不妊治療における生殖補助医療が原因となります。
症状として、下腹部痛、無月経、不正出血をきたします。
子宮外妊娠の頻度は、近年増加しています。
卵巣茎捻転
卵巣茎捻転とは、卵巣がねじれることで腹痛をきたす病気です。
原因は卵巣の良性腫瘍が多く、突然の激しい下腹部痛で発症します。
急性腹症の1つであり、早期に適切な治療をしなければ、卵巣の機能が失われる可能性があります。
腹部エコーを行うことで診断が確定できます。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は発生する組織より3つに大別されますが、最も発症頻度が高いのは上皮性腫瘍です。
いずれも40歳〜60歳の女性にできやすいという特徴があります。
腫瘍が大きくなることで腹痛、お腹の張り、頻尿などの症状を認めます。
卵巣がんは進行が速く、予後が悪いがんの1つであり、進行するまで症状が出にくいことが特徴です。
膀胱炎
膀胱に炎症が起きる病気です。
膀胱炎の多くは細菌感染が原因ですが、薬剤や放射線が原因となることもあります。
膀胱炎の症状として、頻尿、排尿時の痛み、尿が濁る(混濁尿)、残尿感、下腹部の痛み・不快感があります。
膀胱炎の大半は、抗生物質の内服を行うころで治療でき、自宅療養が可能です。
尿管結石
尿管結石は、腎臓と膀胱をつなぐ尿管のなかに結石ができる病気です。
男性に多く、10歳代〜40歳代に多いのが特徴です。
また脱水になりやすい夏に多く発症します。
尿路結石の原因は、痛風(高尿酸血症)、肉の過剰摂取、尿路感染などがあります。
血尿、側腹部痛・腰痛、尿が出づらいといった症状を認めます。
治療は痛みに対しては痛み止めを使用し、点滴や水分をたくさん飲むことで、結石の排出を促します。
結石が大きい場合、結石を砕く治療が必要になります。
このほか、呼吸器系の病気、骨格筋(筋肉)の病気をはじめ、腹痛の原因となる病気は多岐にわたります。
肋骨に異常がある場合、深呼吸すると痛みが出たり、動かすと痛くなります。
また、片頭痛が原因で腹痛を生じることもあります。
強いストレスがかかることで迷走神経反射が起こり、突然の激しい腹痛や吐き気に襲われ、血の気が引いて脱力や意識が朦朧となったり、失神してしまうケースもあります。
腹痛の治療・治し方
診断した病気に対する治療を行います。
腹痛に対する痛み止めは、大きく分けて以下の3種類があります。
- 胃や腸の動きを止める鎮痙剤(ちんけいざい)
- 痛み自体を抑える鎮痛剤
- その他(鎮静作用もある薬剤)
いずれの内服薬も、腹痛に対して即効性があります。
また、内服薬・座薬よりも注射薬のほうが即効性があります。
腹痛に使用する痛み止めの一覧を以下にお示しします。
腹痛の治療薬の一覧
漢方薬の一覧
腹痛や腹痛に伴う症状に対して使用する漢方薬の一覧を以下にお示しします。
漢方薬 | 改善させる症状 |
---|---|
六君子湯 | 胃痛、食欲不振、吐き気・嘔吐 |
半夏瀉心湯 | げっぷ、胸焼け、消化不良 |
茯苓飲合半夏厚朴湯 | ストレスに伴う胃炎、不安神経症 |
柴苓湯 |
吐き気、食欲不振 |
十全大補湯 |
食欲不振、だるさ |
桂枝加芍薬大黄湯 |
お腹の張り(膨満感)、便秘 |
大建中湯 |
お腹の張り(膨満感)、腹痛 |
麻子仁丸 | 便秘 |
大黄甘草湯 | 便秘 |
人参湯 | 下痢、嘔吐、胃痛、胃炎 |
また、急性腹症を疑う場合や心臓の病気が疑われる場合、速やかな処置が必要となります。
腹痛の対処法
腹痛が食道や胃、十二指腸、大腸に炎症などの原因があって生じている場合、以下の対処法を実践してみましょう。
牛乳や乳酸菌飲料を飲むことや、LG21 乳酸菌入りのヨーグルトを食べることがおすすめです。
牛乳や乳酸菌飲料を飲むことで、消化管の粘膜がコーティングされて症状の緩和が期待できます。
また、LG21 乳酸菌入りのヨーグルトを長期的に食べることで、機能性ディスペプシアの症状が緩和するといわれています。
寝る前に白湯を飲むのも良いです。
胃やお腹をあたためることも効果的です。
あたためることで胃や腸の血流が良くなり、痛みの緩和が期待できます。
特に食べすぎて胃痛・腹痛を生じている場合に有効です。
前かがみや猫背の姿勢は避けましょう。
これらの姿勢になることで腹圧がかかり、胃酸が逆流しやすくなり、胃痛がひどくなる可能性があります。
睡眠時に腹痛を和らげる姿勢として、体の右側を下にして寝ることが効果的です。
右を下にして寝ることで、腹痛の原因となる胃酸が胃の奥の十二指腸へ流れやすくなります。
腹痛がある際には、辛いものや刺激物を食べたり、コーヒーやアルコールを飲酒するのは避けましょう。
迷走神経反射による突然の腹痛が起こってしまった場合、すぐに横になり手足を動かすことが効果的です。
腹痛があるときの食事
腹痛がある際に、おすすめの食べ物、気をつけたほうがよい食べ物として以下のものがあります。
○消化の良いもの | ✕気をつける食べ物 |
---|---|
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まとめ
腹痛はありふれた症状ですが、原因となる病気は種類が非常に多く、診断が難しい場合も少なくありません。
また、突然発症したものや、今まで経験のないような痛みの場合、緊急性の高い病気や命を脅かす病気である可能性があります。
市販薬で治らない腹痛も多くあります。
そのため、腹痛が長引いていたり、少しでもおかしいと感じた際は、なるべく早めに医療機関へ受診しましょう。
腹痛で気になることやお困りのことがあれば、当クリニックへお気軽にご相談下さい。
参考文献:
最新ガイドライン準拠 消化器疾患 診断・治療指針 中山書店
急性腹症ガイドライン 2015 医学書院
今日の治療指針 2023年版 医学書院
病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 メディックメディア
日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2020 (改訂第3版)
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/syoukasei2020.pdf
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021 機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/fd2021r_.pdf
明治 乳酸菌研究最前線 乳酸菌OLL2716株試験結果(FD)
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/oll2716/05/