胃ポリープとは
胃ポリープとは、胃のなかにできる盛り上がった病変と定義されています。
胃ポリープは、見た目や大きさである程度、良性・悪性の判断が可能です。
20mm以上であったり、急に大きくなっている場合や、形がいびつに変化している場合には、がん化が疑われるため、ポリープから組織を採取(生検)したり、ポリープ切除を行います。
胃ポリープは、加齢とともに増加します。
また、ピロリ菌がいるかどうかで、発生しやすいポリープの種類が異なります。
ピロリ菌に感染していると、「胃腺腫」・「過形成性ポリープ」ができやすくなります。
これらのポリープは、大きくなることで、がん化する可能性があるため、注意が必要です。
胃ポリープに関して、原因や治療法などの情報を、消化器病専門医・内視鏡専門医・胃腸科専門医である院長が、分かりやすく詳細に解説していきます。
胃ポリープの種類
胃ポリープは大きく分けて、
- 過形成性ポリープ
- 胃底腺ポリープ
- 胃腺腫
の3つの種類に分けられます。
いずれも良性のポリープです。
胃ポリープの場合、大腸ポリープと異なり、大きくなってもほとんどの場合が良性です。
ピロリ菌が感染している胃には、過形成性ポリープが多く、胃腺腫を生じやすいという特徴があります。
ポリープの特徴を1つずつ説明します。
過形成性ポリープ
過形成性ポリープは、胃ポリープのなかで最も頻度が高いポリープです。
多発することが多く、様々な形状となることが特徴です。
また、ピロリ菌の除菌によって、ポリープが小さくなったり、消えてしまうことがあります。
出血を伴うポリープで、慢性的に少量の出血を繰り返すことで、鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。
がん化することは少ないですが、20mm以上のものではがん化することがあります。
出血が多く、貧血をきたす場合や、大きさが20mmを超える場合にはポリープ切除を検討します。
過形成性ポリープの内視鏡画像
胃底腺ポリープ
胃底腺ポリープは、中年女性にできやすく、多くは5mm以下の小さなポリープです。
通常、ピロリ菌のいない胃に多くみられます。
ピロリ菌除菌を行った後に、新たに胃底腺ポリープが発生することがあります。
胃底腺ポリープが、がん化することはほとんどありません。
一方で、ごくまれですが、家族性大腸腺腫症という遺伝の病気で、胃の中に胃底腺ポリープが多発し、がん化するリスクがあることがわかっています。
また、「胃底腺型胃がん」というピロリ菌未感染の方の胃がんが注目されており、胃底腺ポリープと似たような形態をとることがあります。
胃底腺型胃がんが疑わしい場合、組織を採取(生検)を行います。
胃底腺ポリープの内視鏡画像
胃底腺型胃がんの内視鏡画像
多発する胃底腺ポリープの内視鏡画像
胃腺腫
胃腺腫は、ピロリ菌感染によって萎縮性胃炎が生じることで発生する良性腫瘍です。
胃ポリープの約5%を占め、50歳以上で発生しやすいという特徴があります。
①腸型と②胃型に分けられ、多くの胃腺腫は腸型です。
①腸型は、
中高年の男性に多く、胃の前庭部(胃の出口のあたり)にできやすいという特徴があります。
腸型の一部では、がん化するものがあります。
②胃型は、
高齢の女性に多く、胃体部(胃の中央)から噴門部(胃の入り口)にできやすいという特徴があります。
胃型の場合、癌になる確率は約30%と高率です。
基本的には経過観察で問題ないですが
- 大きさが20mm以上
- ポリープの色調で赤みが強い
- 形態が特殊である
場合は、ポリープ切除を検討します。
また、胃腺腫を長期的に認める方では、約10〜15%で胃のその他の場所にがんが出現することが知られているため、年に1回の定期的な胃カメラが推奨されます。
胃ポリープの原因
胃ポリープが発生する原因は、以下のものがあります。
- 加齢
- ピロリ菌
- 遺伝 など
年齢を重ねていくことで、胃ポリープが発生する頻度が高まります。
また、胃ポリープで一番多く見られる過形成性ポリープは、ピロリ菌感染が原因で生じてきます。
遺伝する病気で、胃にポリープを発生するものとして、
家族性大腸腺腫症、Gardner(ガードナー)症候群、Peutz−Jeghers(ポイツ・イエガー)症候群、若年性ポリポーシスなどがあります。
尚、ストレスが胃ポリープの原因となることはありません。
胃ポリープの症状
胃ポリープがあるだけでは、基本的には無症状です。
ポリープが大きくなっても、痛みを起こすことはまずありません。
過形成性ポリープの場合、ポリープから出血することで、下血や鉄欠乏性貧血を引き起こし、めまい、だるさ、息切れ、頭痛などの症状をきたすことがあります。
小さくても侮れない「過形成性ポリープ」
こちらは過形成性ポリープの内視鏡画像です。
大きさは大きくないですが、水で洗い流すだけで、下の画像のように出血を認めました。
食事や水分を摂取することで、ポリープから毎回、出血を起こしていることが予想されます。
このように、小さなポリープでも出血を起こして、下血や貧血の原因となることがあります。
慢性的な貧血や、めまい、だるさ、息切れ、頭痛などの貧血症状が続いている方は、一度、胃カメラで検査しましょう。
胃ポリープの検査・診断
胃ポリープを診断するための検査には、以下のものがあります。
- 胃内視鏡検査(胃カメラ)
- 胃バリウム検査(レントゲン検査)
胃ポリープを診断するための検査として、胃カメラが最も重要です。
胃バリウム検査でも、胃ポリープを診断することができますが、
- 大きさが大きくならないと、ポリープを認識できない
- ポリープの種類がわからない
といったことがデメリットとして挙げられます。
胃カメラでは、ポリープをリアルタイムで直接観察できるため、以下のメリットがあります。
- 病変の形状が詳細にわかる
- 病変を拡大して観察できる
- 血管の走行・太さを視認できる狭帯域光観察(NBI)が可能
- 色素を散布して、病変の凹凸や表面構造を観察することが可能
これらを行うことで、ポリープの種類を判断でき、病変にがんを疑う所見がないかを判断できます。
がんを見つけた時点で、その場で組織採取(生検)を行えることが最大のメリットです。
また、早期がんであれば、内視鏡手術による治療が行えます。
※当院では、AI(人工知能)を搭載した胃カメラを、全例に使用しています。
当クリニックでは鎮静剤(静脈麻酔)を使用して、眠った状態を確認したうえで、検査を行っています。
そのため、苦痛なく安心して内視鏡検査を受けることができます。
お気軽にご相談下さい。
胃ポリープの内視鏡所見
①過形成性ポリープ
②胃底腺ポリープ
③胃腺腫
の胃カメラで見た際の特徴を以下にお示しします。
胃ポリープの治療
胃ポリープは、基本的には経過観察で問題ありません。
過形成性ポリープの場合、ピロリ菌陽性であればピロリ菌の除菌治療を行います。
内視鏡手術
胃ポリープの具体的な内視鏡での手術方法は、
- ポリペクトミー
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
の3種類があります。
ポリペクトミー
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡手術が必要な胃ポリープ
以下の条件を満たす場合、内視鏡手術を検討します。
小さい病変であれば、日帰り手術も可能です。
- 早期胃がん
- 胃腺腫(胃型)
- 組織採取(生検)でGroup 3・高異型度腺腫と診断
- 腫瘍の大きさが20mm以上
- 出血がひどいポリープ
- 発赤が強い
- 丈が高い隆起がある
- 腫瘍の表面に大きなこぶ(結節)があるもの
- 腫瘍のなかに陥凹(へこみ)があるもの
これらの条件に該当する場合、胃がんになる頻度が高くなるので、積極的に内視鏡手術を行います。
そのほか、検診で毎回胃ポリープが引っかかってしまうのがストレスである方や、ポリープ自体があることが嫌であるといった方などは、御本人様の希望・要望に応じて、胃ポリープを切除することもあります。
こちらは大きさが20 mm以上で、出血を伴っている過形成性ポリープです。
内視鏡手術にてポリープ切除を行いました。
ポリープ切除後の食事
ポリープ切除後1週間は消化の良いものを摂取し、消化の悪いものの摂取はなるべく控えるようにしましょう。
チョコレートやお菓子は切除後2,3日すれば食べても大丈夫ですが、辛いお菓子は1週間食べないようにしましょう。
胃ポリープの切除後の食事に関して、以下をご参照ください。
○消化の良いもの (おすすめする食べもの) |
✕消化の悪いもの (食べないほうがいいもの) |
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胃カメラにかかる費用
保険診療の場合、おおよそ以下の費用となります。
以下に料金表をお示しします。
下記の金額は参考料金になりますので、予めご了承ください。
検査内容 | 3割負担 | 1割負担 |
---|---|---|
検査のみ | 約4,500~5,500円 | 約1,500~2,000円 |
ピロリ菌検査あり | 約6,500円 | 約2,200円 |
組織採取した場合 | 約9,000~11,000円 | 約3,000~4,000円 |
ポリープ切除した場合 | 約17,000円 | 約6000円 |
※料金はすべて税込価格です。
※上記の金額はあくまでも目安となるものです。処置内容により金額は異なります。
まとめ
胃ポリープの多くは無症状であるため、検診や人間ドックで行った検査で偶然に見つかるケースが大半です。
また、「検診のバリウム検査で引っかかったけど、症状がないから様子を見よう」と放置されている方が数多く見受けられます。
しかし、胃ポリープの中にはがん化するものがあったり、貧血をきたすものもあります。
まずは一度、胃カメラを行って、治療が必要ないポリープであるのか精査しましょう。
また、「ピロリ菌がいないから胃カメラは必要ないだろう」と考える方も多くいらっしゃいます。
ピロリ菌が陰性でも、胃底腺胃がんができる可能性はありますので、定期的な胃内視鏡検査を行うようにしましょう。
胃ポリープや胃カメラ検査で気になることがあれば、お気軽に当クリニックへご相談ください。
参考文献:
胃と腸アトラスⅠ 上部消化管 第2版 医学書院
内視鏡診断のプロセスと疾患別内視鏡像-上部消化管 改定第4版 日本メディカルセンター
消化器内視鏡 第28巻 8号 胃疾患アトラス 東京医学社
臨牀 消化器内科 Vol.30 No.7 胃癌の診療
日本消化器内視鏡学会 胃ポリープについて、過形成性ポリープと胃底腺ポリープの違いは何ですか?
https://www.jges.net/citizen/faq/esophagus-stomach_07#:~:text=%E8%83%83%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%A8%E3%81%AF%E6%AD%A3%E7%A2%BA,%E6%80%A7%EF%BC%89%E3%81%AB%E5%88%86%E9%A1%9E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82