TOPへTOPへ

痛風

痛風とは

痛風とは、血液中の尿酸が増加し、関節に尿酸が貯まることで生じる関節炎です。
突然、足の激痛が起こり、文字通り、風が吹くだけでも激痛を生じます。
痛む場所は、足の親指の付け根が多く、靴が履けなくなるほど痛みます。
その他、足の甲・アキレス腱・ひざ関節・手関節に痛みを引き起こします。
原因は、食べすぎ、肥満、アルコール、無理なダイエット、閉経などがあります。
血液中の尿酸値が7.0[mg/ dl]以上の場合、高尿酸血症と定義されています。
男性に圧倒的に多く、成人男性の20〜25%は、高尿酸血症であるといわれており、食生活の欧米化に伴って増加傾向です。
高尿酸血症が持続すると、痛風発作が生じるだけでなく、尿路結石を生じて、突然の腰の激痛で発症することがあります。
さらに、動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
高尿酸血症は、痛風発作や尿管結石を起こさない限り、無自覚・無症状です。
健診や人間ドックなどで、尿酸値が高めと指摘された方は、軽視せずに一度、内科で診察を受けましょう。
痛風に関して、原因・初期症状や、早く治す方法などの細かい情報まで、認定内科医である院長が、分かりやすく・詳細に解説していきます。

痛風の原因

痛風を起こす原因として、

  • 過食(食べすぎ)
  • 運動不足
  • 肥満
  • お酒(アルコール)

といった生活習慣に関わるものが知られています。
また、

  • 無理な運動を行うダイエット
  • 無酸素運動

を行うことで、一時的に尿酸値が高くなり、痛風発作が起こることがあります。

プリン体ゼロのビールも痛風の原因に

「プリン体ゼロのビールだから、問題ないだろう」と考えて、多く飲まれる方をよくお見かけします。
ですが、プリン体ゼロのビールでも痛風を起こします。
その理由は、「アルコール自体が痛風の原因」となるからです。
プリン体ゼロのビールでも、大量に飲むことで尿酸値が上昇します。
また、アルコールを飲み過ぎることで、体が脱水となるため、尿酸値がさらに上昇してしまいます。
プリン体ゼロのビールでも、飲み過ぎには注意しましょう。 尿酸が貯まって痛風を起こすメカニズムは、

  1. 尿酸の産生が過剰となるタイプ、
  2. 尿酸の排出が低下するタイプ、
  3. ①と②の混合型

の3種類に分けられます。
それぞれ以下のものがあります。

痛風の原因の一覧

1.尿酸の産生が過剰
  • がん
  • 横紋筋融解症
  • 甲状腺機能低下症
  • 溶血性貧血
  • 薬剤(テオフィリン)など
2.尿酸の排出が低下
  • 慢性腎臓病
  • 脱水
  • 利尿薬
  • 結核の薬
  • 免疫抑制薬(シクロスポリン) など
3.混合型
  • 過食(食べすぎ)
  • 肥満
  • 飲酒(アルコール)
  • やけど
  • 外傷
  • 妊娠高血圧症候群 など

その他、遺伝的な病気で尿酸が高くなるものがあります。

痛風の症状

痛風発作が起こる前に、以下の2つの初期症状がみられます。

  • 関節のピリピリ・ムズムズした感じ
  • 関節に熱感がある(熱を帯びてくる)

これらの症状が出て、すぐに適切な治療を行うことで、痛風発作に伴う激痛を防ぐことができます。

痛風の症状

痛風の症状は、以下の2つになります。

  • 痛風発作
  • 痛風結節(けっせつ)

典型的な痛風は、暴飲・暴食した翌日の朝に、足の付け根が腫れて、痛くなることが一般的です。
足の付け根以外にも、足の甲・アキレス腱・膝(ひざ)関節・手関節が腫れて、痛みが出ることがあります。
1回の発作は、7〜10日で改善します。
痛風発作が起こったあとは間欠期といって、無症状になる期間があります。
治ったと思っていたら、再び発作が生じることがあるので注意が必要です。
また、耳たぶの内側・足や手の付け根・肘関節に「痛風結節(けっせつ)」というコブができることがあります。
痛風結節は通常、痛みはありませんが、炎症を伴うことで痛みが生じることがあります。
痛風発作は再発することが多いです。
発作を経験している方は、違和感として発作の「前兆」を感じる場合があります。

痛風の合併症

痛風の合併症として、以下のものがあります。

  • 尿管結石
  • 慢性腎臓病(痛風腎)
  • メタボリックシンドローム
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 糖尿病
  • 虚血性腸炎
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞  など

高尿酸血症が持続することで、さまざまな合併症を引き起こします。
尿管結石では、突然の腰部の激痛として発症します。
慢性的に腎臓へダメージを与えるため、慢性腎臓病を引き起こして、人工透析が必要となるケースがあります。
また、生活習慣病との関連が強く、高尿酸血症の80%の方は、メタボ(肥満)や高血圧脂質異常症糖尿病を合併しているという特徴があります。
これらの生活習慣病と痛風は、いずれも動脈硬化の原因となります。
動脈硬化が進行することで、虚血性腸炎を引き起こします。
虚血性腸炎は治療を行うことで数日で治りますが、再発また、動脈硬化が進行することで、心筋梗塞や脳梗塞といった命の危険に関わる病気を引き起こします。

痛風と内臓脂肪の関係

内臓脂肪が貯まってくると、尿酸の合成が促進されることがわかっています。
内臓脂肪の面積が大きいほど、尿酸値が高くなるという正の相関があります。
また、高尿酸血症の方に肥満が多いというのも事実です。
メタボリックシンドロームでは、インスリンが過剰に分泌されるため、尿酸を再吸収しやすくなり、尿酸の産生が増えます。
痛風と内臓脂肪(メタボリックシンドローム)の共通点として、いずれも動脈硬化のリスクになり、食事や運動によって改善するという点があります。

Tamba S. et al.: Intern Med. 47: 1175-1180, 2008

※当院では、オンライン診療にて、肥満の治療を行っております(自費診療)。
ご自宅や職場から、約5分の診察で内服薬の処方が可能です。
LINE公式アカウントより、お気軽にご相談ください。

痛風の検査・診断

痛風を診断する検査として、以下のものがあります。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 関節穿刺(せんし)

血液検査で、尿酸値が7.0[mg/ dl]以上の場合、高尿酸血症の診断が確定します。
血液検査で尿酸値 ≧ 9.0[mg/ dl]が持続する場合、痛風発作を発症するリスクが明らかに高くなるといわれています。
ただし、痛風発作中の尿酸値は、正常値のこともあるため、注意が必要です。
痛風の原因が

  • 尿酸の産生が過剰なのか
  • 尿酸の排出が低下しているのか

を調べるために、蓄尿検査を行います。
膝などの関節が腫れている場合、関節内に針を刺して関節液を吸引する「関節穿刺(せんし)」を行うことで、診断を確定することもできます。
関節穿刺を行うことで、痛風とよく似た「偽痛風(ぎつうふう)」かどうかを判断することができます。
痛風と偽痛風では治療法が異なります。
そのため、痛風だと思って治療していてもなかなか治らない場合や、関節炎が何度もあるのに尿酸値が正常値である場合に、関節穿刺を行うことが多いです。

痛風のチェックリスト

以下のチェックポイントに該当する症状がある場合、痛風(高尿酸血症)の可能性があり、精査が必要な可能性があります。

このような症状を認める場合、なるべく早く医療機関へ受診しましょう。

痛風の治療

痛風の治療は、①生活習慣の改善、②薬物療法の2種類があります。

生活習慣の改善

尿酸値が7.0 [mg /dl]以上である方は、生活習慣の改善が必要となります。
具体的には、食事療法、お酒(アルコール)の制限、運動療法が必要になります。
偏った食生活や、運動不足といった生活習慣を改善させることで、肥満を解消することが大切です。

食事療法

過剰なカロリー摂取を控え、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
食事療法のポイントは以下の3つです。

  1. 食事の量を減らす
  2. バランスの良い食事をとる
  3. 規則正しい食事をする

食事量が多いと思ったら、腹八分目を心がけましょう。
週に2回は、休肝日を作りましょう。
食事内容は、肉類を減らして魚・野菜類を中心にとりましょう。
ビタミンCには尿酸値を下げる効果があるといわれていますので、適度に摂取しましょう。
また、水分をしっかり取ることも重要です。
1日3食を決まった時間にとるようにしましょう。

痛風の方が注意すべき食べ物・飲み物

尿酸値が高い方は、プリン体を多く含む食品、お酒(アルコール)に注意していく必要があります。
以下に、食べたほうが良い食べ物・気をつけなければならないものの一覧をお示しします。

食べたほうが良いもの
n-3系脂肪酸(オメガ3) ビタミンCを多く含む食品 食物繊維を多く含む食品
青魚
・マイワシ
・サンマ
・マグロ
・ハマチ
・ブリ 
・サバ など
果物
・アセロラ
・ゆず
・キウイ
・すだち
・レモン
・柿
・ドライマンゴー
野菜
・パプリカ
・ブロッコリー
・ケール
・モロヘイヤ
・かぼちゃ
  など
玄米
  イモ類
  きのこ類
  こんにゃく
  海藻類
  ・ひじき
  ・ワカメ
  ・青のり
  野菜類
  ・キャベツ
  ・ごぼう
  ・切り干し大根
  ・パセリ
  ・ほうれん草
  ・きゅうり
  ・小松菜
  豆類
  ・大豆
  ・あずき
  ・いんげん豆
  ・ピスタチオ
  ・落花生
  ・アーモンド
  果物類
  ・キウイ
  ・パイナップル
  ・バナナ
  ・りんご
  ・アボカド など
食べ過ぎ注意のもの
プリン体を多く含むもの
煮干し、かつお節、あん肝、白子、牡蠣
イワシの干物、サンマの干物、ニシン、大正エビ
鶏レバー、豚レバー
地ビール、紹興酒
クロレラ、ローヤルゼリーなど

たらこや数の子などの魚卵にプリン体が多く含まれるというイメージを持たれがちですが、実際には上記の食品のほうが尿酸値が多く含まれます。
アルコールでは、地ビールや紹興酒に多いです。
一方で、健康食品として好まれているクロレラや、ローヤルゼリーにはプリン体が多く含まれるので、注意が必要です。
また、糖分により尿酸値が上昇するため、スポーツドリンクを大量に飲むことも控えましょう。

痛風発作を早く治す方法

痛風発作が起きてしまった場合、まずは以下のことを行いましょう。

  • ロキソニンやボルタレンといった痛み止め(NSAIDs)を内服する
  • 大量の水や麦茶を飲む
  • なるべく安静にする

まずは痛み止めを内服しましょう。
一般的に、血管内が脱水であるときに尿酸値は上昇しやすくなります。
大量に水分を摂取することで、脱水が補正されます。また、尿酸を尿から排出することができます。
痛風の発作時は、関節の炎症が強く生じています。
無理して歩いたり、患部を動かすことで、炎症が増悪してしまいます。
安静にして、痛みが落ち着くのを待ちましょう。

運動療法

痛風(高尿酸血症)の治療・予防には、運動療法が大切です。
運動療法のポイントは以下の3つです。

  1. 息切れしない程度の運動を行う
  2. 1日に30分以上、週3回以上行う
  3. 効果が出るまで継続する

ウォーキング、スイミング、サイクリングなどの有酸素運動には、肥満をはじめとした生活習慣病の全般に効果があります。
会社からの帰りに、ひと駅手前から歩くようにしたり、買い物に遠回りして出かけるなど、無理なく続けられる習慣を作りましょう。
また、筋力トレーニング(筋トレ)には、筋力の維持・増進だけではなく、基礎代謝を高める効果があります。
有酸素運動と併せて行うことで相乗効果が期待できます。
一方で、過度な筋トレは、尿酸値を高めますので注意しましょう。
ご高齢の方や、心臓や脳に病気のある方は、運動療法を行わないほうがよいケースもあります。
運動療法を開始する際は、必ず医師の指導を受けて下さい。

薬物治療

尿酸値が7.0 [mg /dl]以上であり、

  1. 痛風の症状がある方
  2. 痛風発作を経験したことがある方

が治療の対象となります。
尿酸を下げる内服薬には、

  1. 尿酸が作られるのを抑える薬(XOR阻害薬)と、
  2. 尿酸をからだの外へ排出しやすくする薬があります。

これらの薬で、痛風発作の再発予防のために、
尿酸値 ≦ 6.0 [mg/ dl]を治療目標として内服を行います。
痛風発作の前兆があった場合には、コルヒチンを内服します。
発作時の痛み止めには、

  • NSAIDs(インドメタシン、ジクロフェナクなど)
  • ステロイド

を使用します。
痛風による痛みは、発作が起こってから14日以内に改善するといわれています。

  一般名 注意点
尿酸の合成を抑える薬 ・アロプリノール
・フェブキソスタット
・トピロキソスタット
アロプリノールは腎障害の程度に合わせて投与量調整が必要
尿酸排出を促進する薬 ・ベンズブロマロン
・プロベネシド
・ドチヌラド
尿路結石の既往がある方や腎障害のある方には使用しない
痛風発作の予防薬 ・コルヒチン 下痢の副作用あり
痛風発作中の薬 ・NSAIDs ・ステロイド 胃潰瘍の副作用あり
尿をアルカリ化する薬 ・クエン酸カリウム
・クエン酸ナトリウム
 

痛風発作などの症状がない方でも、以下の条件を満たす場合、薬物治療を行います。

  1. 生活習慣の改善を行っても、尿酸値 ≧ 9.0 [mg/ dl]
  2. 高血圧・糖尿病などの合併症があり、尿酸値 ≧ 8.0 [mg/ dl]

健診や人間ドックで、上記の条件にに該当した場合、なるべく早めに内科を受診しましょう。

※当院では、オンライン診療にて、肥満の治療を行っております(自費診療)。
ご自宅や職場から、約5分の診察で内服薬の処方が可能です。
LINE公式アカウントより、お気軽にご相談ください。

痛風の対策・対処法

メタボリック・シンドロームや肥満、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、痛風発作を発症するリスクを高めます。
そのため、治療時と同様に、食事や運動習慣といった生活習慣の改善が重要です。
お酒を飲んだ際には脱水になりやすく、脱水自体も痛風を引き起こす原因にもあります。
飲酒した後は、同じ量の水分を摂取することを心がけましょう。

尿酸値が高いだけでは、基本的には無症状のため放置される方が多く、実際に痛風発作が起こってから意識されることが大半です。
一方で、痛風発作は激痛であり、日常生活に支障をきたします。
また、痛風の初発年齢は30歳代が最も多いとされています。
尿酸値が高いことで、痛風発作が起きるたけでなく、尿路結石や心筋梗塞、脳梗塞といった病気のリスクを高めます。
健診や人間ドックで指摘された際には、軽視せずに一度、内科へ受診しましょう。
痛風(高尿酸血症)に関して、何か気になることやお困りのことがあれば、お気軽に当院へご相談下さい。

参考文献:

日本痛風・核酸代謝学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/Clinical_Practice_Guidelines_of_Hyperuricemia_and_Gout.pdf
日本内科学会誌 痛風・高尿酸血症の病態と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_458/_pdf/-char/ja

日本リウマチ学会 痛風とは
https://www.ryumachi-jp.com/medical-staff/disease_drug/tsufu/

日本整形外科学会 「痛風」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/gout.html