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ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌は、胃の粘膜に感染して、さまざまな病気を引き起こす細菌です。ピロリ菌に感染していると、胃がんの発がんリスクは5倍以上になるといわれています。胃がんのほか、胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍、胃悪性リンパ腫など、さまざまな病気の原因となります。
除菌治療により、これらの病気の発症を防ぐことができます。
近年、ピロリ菌による胃炎で、20〜30歳代で起きやすい「⿃肌胃炎」が注⽬されています。⿃肌胃炎がある場合、「未分化型がん」という進⾏の速い胃がんが、発症しやすくなります。ピロリ菌が⾃然治癒することはなく、感染してから除菌するまでが早いほど、胃がんの予防効果が⼤きくなります。
中学⽣以上であれば、ピロリ菌の検査を⾏って、診断・治療が可能です。ご家族でピロリ菌がいた⽅や、幼少期に地⽅で育った⽅は、⼀度、消化器内科を受診して、検査を受けましょう。
ピロリ菌に関して、原因・症状・検査内容や、おすすめの⾷べものなどの細かい情報まで、消化器病専⾨医・内視鏡専⾨医・胃腸科専⾨医・ピロリ菌感染症認定医である院⻑が、分かりやすく詳細に解説していきます。

ピロリ菌 専門医による徹底解説

ピロリ菌の原因

ピロリ菌感染のほとんどが、乳児・幼児のときに⼝から感染します。
ピロリ菌の感染経路として、⼩さい頃にピロリ菌に感染している親からのキスでうつったり、井⼾⽔を飲むことが挙げられます。
ご両親がピロリ菌に感染していた⽅や除菌している⽅は、ご両親からうつっている可能性があるので⼀度は検査が必要です。
多くは乳幼児のときに感染しますが、成⼈になってからなってから感染することも稀ながらあります。
以前は、飲み⽔などに混⼊したピロリ菌による感染が多かったですが、現在は上・下⽔道の整備が進んだことでほとんど認めなくなっています。
幼少期に⽥舎で川遊びをして川の⽔を飲んだり、キャンプで⼭の⽔を飲んだことがきっかけで、ピロリ菌に感染していることもあります。
尚、⾷べ物やストレスが原因で、ピロリ菌に感染することはありません。

ピロリ菌の症状

ピロリ菌に感染し、萎縮性胃炎が進⾏することで、以下のような症状を認めます。

など

しかし、すべての患者様で症状が出る訳ではなく、ピロリ菌に感染していても無症状の⽅が多くいます。
ピロリ菌の除菌治療をすることで、⼝臭が改善されます。
除菌成功後、⼝臭の改善効果が2年以上維持される可能性があるとの報告もあります。

ピロリ菌感染を疑うチェックポイント

こちらのピロリ菌感染を疑うチェックポイントに該当する項⽬がないか、ご確認ください。

ピロリ菌を疑うポイント

このような症状・エピソードを認める場合、なるべく早めに消化器内科を受診しましょう。

ピロリ菌の検査・診断

ピロリ菌を保険診療で治療するためには、1と2の両⽅を⾏う必要があります。

  • 1.胃内視鏡検査(胃カメラ)
  • 2.ピロリ菌を調べる検査

以下に詳しく説明していきます。

1. 胃内視鏡検査(胃カメラ)

ピロリ菌は慢性胃炎の約80%、胃潰瘍の80%以上、十二指腸潰瘍の90%以上で感染が認められるとされています。
胃カメラで直接、胃の粘膜を観察することで、ピロリ菌がいるかどうかをある程度判断できます。また、若者に生じやすいピロリ菌の胃炎として「鳥肌胃炎」があります。
胃カメラで胃の粘膜を見た際に鳥肌のように見えます。鳥肌胃炎も慢性胃炎と同様に胃がんの発生母地であり、除菌することにより消失していくことが多いです。
また、ピロリ菌が陰性なのに、萎縮性胃炎(慢性胃炎)と診断されるケースがあります。
これは自然除菌といって、これまでに他の病気で内服や点滴投与した抗生物質で、偶然、ピロリ菌が除菌されてしまったことが考えられます。
その他、検査自体の制度の問題で、本当はピロリ菌がいるのに陰性となる(偽陰性)であった可能性もあります。

2. ピロリ菌を調べる検査

  1. 胃カメラ検査(迅速ウレアーゼ試験)
  2. ⾎液検査
  3. 尿検査
  4. 尿素呼気試験(ふーっと吐く息で⾏う検査)
ピロリ菌を調べる検査

ピロリ菌に感染しているかどうかを調べるには、胃内視鏡検査(胃カメラ)の際に同時に行う方法と、胃カメラを必要としない方法があります。
内視鏡を使用しない方法では、血液・尿・便を用いる検査に加えて、吐く息を使う尿素呼気試験があります。
それぞれの検査法には長所と短所があり、正確な判定のためには、2つ以上の検査で確認することが推奨されています。
当院では、4種類の方法でピロリ菌がいるかどうかを調べます。

  1. 胃カメラ検査(迅速ウレアーゼ試験)
    すぐに判定することができますが、ピロリ菌の量が少ない場合には偽陰性(ピロリ菌がいても陰性と出る)となることがあるので、注意が必要です。
    また、胃薬(PPI)や抗生物質、胃粘膜保護薬、下痢で用いられるビスマス製剤を内服している方では偽陰性となりますので、注意が必要です。
  2. 血液検査
  3. 尿検査
    いずれもピロリ菌の抗体を測定することで判断します。
    簡単に調べることができ、ピロリ菌の量が少なくても偽陰性が少ないのが特徴です。
    しかし、除菌治療後にはすぐには陰性と判断されないため、除菌後の効果判定には不向きです。
    また、血液検査で数値(抗体価)が3〜10 U/ml未満の陰性高値の方の20%は、ピロリ菌感染があることがわかっています(偽陰性)
    血液検査では、ペプシノーゲンを同時に測定することができ、胃がんのリスク診断(ABC分類)に用いられています。
    メタ解析の結果では、ピロリ菌抗体が陽性の場合、胃がんのリスクが2.28倍になると報告されています。
  4. 尿素呼気試験(ふーっと吐く息で行う検査)
    最も精度の高い検査法であり、胃の全体のピロリ菌を反映するため、除菌後の効果判定に適しています。
    老化した胃では偽陰性(ピロリ菌がいても陰性と出る)を示します。
    また、胃薬(PPI)や抗生物質、胃粘膜保護薬、下痢で用いられるビスマス製剤を内服している方では偽陰性となります。
    陰性高値(数値が2.5〜5.0‰)の場合、ピロリ菌が除菌されていない可能性があるので、注意が必要です。
    これら4つの検査を患者様の状況に応じて、どの検査を行うか判断していきます。
    当クリニックでは、ピロリ菌感染症認定医による「適切で正確なピロリ菌の診断・治療」を行っています。

ピロリ菌を調べる検査の⼀覧

検査法 利点 欠点
迅速ウレアーゼ試験
(胃カメラ)
  • 迅速診断が可能
  • 特異度が高い
    (陽性なら、感染ありと診断できる)
  • 安価
  • 除菌後の感度悪い
    (除菌後に不向き)
  • 胃薬(PPI)、胃粘膜保護薬、抗生物質の内服で偽陰性
  • ピロリ菌の量が少ないと、偽陰性
    (ピロリ菌がいても陰性と出る)
血液検査
尿検査
  • 薬の休薬が不要
  • スクリーニングに適している
  • 過去の感染も陽性
    (除菌後に不向き)
  • 血液検査で陰性高値の20%程度は、ピロリ菌が陽性
尿素呼気試験
(UBT)
  • 除菌判定に有用
  • 感度と特異度が高い
  • 老化した胃で、偽陰性
  • 胃薬(PPI)、胃粘膜保護薬、抗生物質を内服していると偽陰性
    (ピロリ菌がいても陰性)
  • 陰性高値の場合、ピロリ菌陽性の可能性あり

ピロリ菌の検査費⽤の⼀覧

ピロリ菌検査の費用を以下にまとめました。
症状がない場合の胃カメラや人間ドックでは自費となります。

  検査方法 自費 保険診療
(3割)
胃カメラ検査を伴う
ピロリ菌検査
迅速
ウレアーゼ試験
約15000円 約5,000円
ピロリ菌検査
のみ
尿検査 約2,200円 約750円
血液検査 約4,400円 約1,400円
呼気検査 約5,500円 約1,600円

※税込み価格となります。
その他、診断の補助として、
血清ペプシノゲンⅠ・Ⅱ(PG Ⅰ・PG Ⅱ)を測定します。
ピロリ菌感染を疑う基準として

  • PG Ⅱ有意の上昇
  • PG Ⅰ / PG Ⅱ比の低下

となります。除菌が成功することで、PG Ⅰ・PG Ⅱともに低下し、PG Ⅰ/PG Ⅱ比は上昇します。

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

ピロリ菌が胃のなかに感染していると、萎縮性胃炎が生じます。
萎縮した粘膜は、胃カメラで見ると白く見えます。

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

また、萎縮が進むことで、胃のヒダがなくなります。

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

※正常な胃の内視鏡画像①
萎縮粘膜(白い領域)はなく、集合細静脈(RAC)がしっかりと見えます。

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

※正常な胃の内視鏡画像②
RAC(集合細静脈)の内視鏡画像です。
「RACが認められる場合、ピロリ菌はいない胃」であると判断できます。
また、ピロリ菌除菌後にもRACが復活してきます。

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

※正常な胃の内視鏡画像③
胃のヒダがしっかり観察されます

ピロリ菌のいる胃の内視鏡画像

ピロリ菌と胃がんの関係

ピロリ菌の感染が持続することで、①萎縮性胃炎、②鳥肌胃炎などの慢性胃炎が生じます。
胃にピロリ菌が感染することで、胃の粘膜は少しずつ「萎縮」していき、萎縮性胃炎が持続します。この「萎縮粘膜」から胃がんが発生しやすいのです。
鳥肌胃炎は、20〜30歳代で起きやすい慢性胃炎です。鳥肌胃炎は、「未分化型がん」という進行が速いタイプの胃がんのリスクを高めることが知られています。
ピロリ菌を除菌することで、胃の粘膜の萎縮の進行を止めることができ、鳥肌のような盛り上がりは消失します。そして、除菌した後は、少しずつもとの粘膜に戻っていきます。
萎縮の程度にもよりますが、萎縮した粘膜が完全にもとの粘膜に戻るのには、10年〜数十年かかるといわれています。
つまり、ピロリ菌を除菌した後でも、胃がんが発生しやすい粘膜は残っているのです。
そのため、ピロリ菌を除菌した方は、除菌が成功したあとでも、年に1回の定期的な胃カメラ検査で、胃の中にがんができてないかを調べることが推奨されています。

ピロリ菌の感染で起こる病気

ピロリ菌感染が原因で⽣じる疾患には以下のものがあります。

  • 萎縮性胃炎(慢性胃炎)
  • ⿃肌胃炎
  • 胃潰瘍⼗⼆指腸潰瘍
  • 胃腺腫
  • 胃がん
  • 胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫)
  • 胃ポリープ(胃過形成性ポリープ)
  • 機能性ディスペプシ
  • 特発性⾎⼩板減少性紫斑病(ITP)
  • 慢性じんま疹
  • 鉄⽋乏性貧

ピロリ菌に感染していることで、さまざまな病気を引き起こします。
それぞれの病気について、1つずつ順に⾒ていきましょう。

萎縮性胃炎(慢性胃炎)

萎縮性胃炎とは、ピロリ菌に感染し、数週間から数ヶ月の間に生じる胃炎です。
胃もたれ胃痛胃の不快感を起こしますが、ほとんどの方が無症状です。
胃がんは、萎縮性胃炎から発生しやすいという特徴があります。また、ピロリ菌の除菌治療により、萎縮性胃炎の進行が止まり、時間とともに少しずつ、萎縮が改善します。
除菌後6年以上経過してから、有意に胃の粘膜は改善していきますが、それまではピロリ菌がいた粘膜から胃がんが発生するリスクはあります。
また、萎縮した粘膜が完全に元の胃の粘膜に戻るには10年以上かかります。

萎縮性胃炎(慢性胃炎)

⿃肌胃炎

鳥肌胃炎とは、ピロリ菌感染による慢性胃炎の1つです。
胃カメラで見た際に、胃の粘膜が鳥肌のように見えることが特徴です。
20〜30歳代で起きやすい慢性胃炎であり、鳥肌胃炎は「未分化がん」という進行が速いタイプの胃がんのリスクを高めることが知られています。
ピロリ菌除菌後、胃の粘膜は少しずつ元の粘膜へ戻っていきますが、萎縮性胃炎と同様、完全に戻るまでは数年から10年以上かかるといわれています。

胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍

胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃痛、吐き気やげっぷ、吐血、黒い便、血便などを引き起こします。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の方の80〜90%に、ピロリ菌の感染が認められます。
ピロリ菌感染のある胃・十二指腸潰瘍に除菌治療を行うと、潰瘍の再発や出血などの合併症がほとんど起こらなくなります。
ピロリ菌に感染していると、潰瘍が治ったあとでも再発することが多いという特徴があります。

胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍

胃腺腫

胃腺腫は、ピロリ菌感染によって萎縮性胃炎が生じることで発生する良性腫瘍です。
基本的には経過観察で問題ないですが、大きさが20mm以上であったり、ポリープの色調で赤みが強い場合、形態が特殊である場合は、ポリープ切除を検討します。
また、胃腺腫を長期的に認める方では、約10〜15%で、胃のその他の場所にがんが出現することが知られています。

胃がん

胃がんは、がんの死亡者数で男女ともに第3位と、依然として高い状況が続いています。
胃がんの初期では自覚症状がほとんどないためです。
早期がんの大半が無症状であり、がんが進行することで、貧血や体重減少、胃痛、血便(黒い便)などを認めます。
胃がんの原因は、ピロリ菌感染(萎縮性胃炎)のほか、塩分の多い食事、タバコ、アスベスト、ゴム製品の製造業をされている方などです。
ピロリ菌に感染している人では、胃がんのリスクは5倍以上になります。
一方で、ピロリ菌除菌が成功することで、胃がんになるリスクを約1/4(25%)まで軽減すると報告されています。

胃がん

胃悪性リンパ腫(胃MALTリンパ腫)

胃の粘膜にあるリンパ組織(MALT)から発生する悪性度の低い腫瘍です。
リンパ腫はリンパ球の悪性腫瘍(がん)の総称で、MALTリンパ腫は、年単位でゆっくり発育するリンパ腫の一つです。
MALTリンパ腫が胃の中にあっても、自覚症状はほとんどありません。
比較的まれな病気ですが、ピロリ菌による胃MALTリンパ腫の60〜80%はピロリ菌の除菌によって治癒・寛解します。
そのため、ピロリ菌除菌療法がまずはじめに行う治療になります。

胃ポリープ(過形成性ポリープ)

ピロリ菌感染によってできやすい胃ポリープは、過形成性ポリープというタイプのものになります。
過形成性ポリープは、出血したり、大きくなって一部ががん化することがあります。
ピロリ菌の治療により、70%の症例で過形成性ポリープが縮小または消失することが報告されています。
20mm以上の大きなポリープや出血を伴う胃ポリープは、内視鏡治療を検討します。
過形成性ポリープが多発している患者さんには、除菌治療が勧められます。

胃ポリープ(過形成性ポリープ)

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、胃もたれ、お腹が張る感じ、胃痛などの症状があるにもかかわらず、検査をしても異常が見つからない病気です。
ピロリ菌の感染者でも上記の症状を訴えることがあり、一部の患者さんではピロリ菌の除菌で症状が改善するといわれています。

特発性⾎⼩板減少性紫斑病(ITP)

特発性血小板減少性紫斑病は、血小板に対する自己抗体ができることで、血小板が減少し出血しやすくなる病気です。
ピロリ菌に感染したITPの患者さんの約50%は、ピロリ菌の除菌治療により血小板が増加し、病気が治ります。
そのため、治療としてまずピロリ菌の治療が勧められます。
除菌療法は、原則として18歳以上の患者さんが対象となります。

慢性じんま疹

じんま疹のなかで6週間以上つづくものを慢性蕁麻疹といいます。
原因やメカニズムはまだよくわかっていませんが、ピロリ菌に感染している場合、除菌をすることで、慢性じんま疹が改善・治癒することがあります。

鉄⽋乏性貧⾎

からだの鉄分が足りなくなることで生じる貧血です。
成人も含め、とくに小児の鉄欠乏性貧血では、ピロリ菌の除菌により貧血が改善することがあります。
その他、アルツハイマー病や糖尿病、パーキンソン症候群の発症にもピロリ菌感染との関連が指摘されています。

ピロリ菌の治療

ピロリ菌は一度感染すると、自然治癒することはなく、胃の中で感染が持続します。
感染を放置することで、胃がんのできやすい粘膜が広がっていき、胃がんの発がんリスクは高まります。
一方で、ピロリ菌除菌が成功することで、胃がんになるリスクを約1/4(25%)まで軽減すると報告されています。
小児、高齢者の方に対しても、除菌治療は行うことができます。
ピロリ菌が陽性と診断された場合、保険診療にてピロリ菌の検査・治療を受けることが可能です。
残念ながら市販の薬で、ピロリ菌を除菌できるものはありません。
検診や人間ドックなどで、ピロリ菌陽性と診断された場合、必ず胃内視鏡検査を行い、除菌治療を受けましょう。

ピロリ菌除菌の⽅法

ピロリ菌の除菌治療には、
一次除菌、二次除菌、三次除菌などがあります。
一次除菌に失敗した場合、二次除菌を行います。
ピロリ菌の除菌治療は、
胃薬と抗生物質を朝・夕2回、7日間服用します。
除菌薬の内服終了後、4週間以上あけて除菌の判定を行います。
具体的には、尿素呼気試験を行って、ピロリ菌が除菌できたか効果判定を行います。
一次除菌で約70~90%の方は除菌に成功します。
一次除菌が失敗する原因は、耐性菌(その抗生物質が効かない菌)であることが多いです。
二次除菌を行うことで、約80~90%の方は除菌に成功します。
三次除菌は、保険診療ではなく自費診療となります。

ピロリ菌除菌の治療費⽤

ピロリ菌除菌の治療費⽤を以下にお⽰しします。
⼀次除菌・⼆次除菌は保険適応内で⾏えますが、三次治療以降はすべて⾃費になります。

ピロリ菌の除菌 自費 保険診療
(3割負担)
一次除菌 約850〜900円
二次除菌 約850円
三次除菌 約5,500円

※税込み価格になります
※検査にかかる費用は別途かかります

除菌治療に伴う副作⽤

除菌中には下痢、軟便を認めることがあるため、除菌薬と併用して整腸剤を内服します。
また、舌炎、味覚異常、じんま疹、だるさ(肝機能障害)、アナフィラキシーなどが出現する可能性もあります。
除菌薬内服中に上記のような症状を認めた場合、処方してもらった医療機関に連絡するようにしましょう。

ピロリ菌除菌の注意点

薬の飲み間違い、飲み忘れ、自己判断などで薬を減らすと、除菌に失敗し、抗生物質が効かない「耐性菌」を作ってしまう可能性があります。
また喫煙(タバコ)は、除菌率を低下させてしまうため、除菌薬内服中の1週間は禁煙するようにしてください。
二次除菌を行う場合は、内服中の1週間はアルコールの飲酒を控えてください。
薬のアレルギー、とくにペニシリンアレルギーのある方は、薬を飲み始める前に必ず医師に相談してください。ペニシリン(アモキシシリン)を使用しない除菌療法を選択できます。
ほかに服用中の薬がある場合も、除菌の薬が影響することがありますので、必ず医師にお知らせ下さい。
除菌後に一時的に逆流性食道炎の症状(胸焼けや胃の痛み)が出ることがあります。
除菌した後でも、ごくまれにピロリ菌が再陽性化することがあります。

ピロリ菌に有効な⾷べ物

ピロリ菌に効く食品として、LG21乳酸菌入りのヨーグルトがあります。ピロリ菌による炎症を抑える効果が報告されています。
ですが、あくまで炎症を抑制するだけであって、除菌できるわけではなく根本的な治療とはなりません。
ピロリ菌が原因で胃潰瘍や十二指腸潰瘍を生じた場合には、消化の良い食べ物の摂取が必要ですが、それ以外では特に食べてはいけないものや飲んではいけないものはありません。

ピロリ菌の再発・再感染について

2021年のシステマティックレビューでは、ピロリ菌の再発率は約4%であり、ここ10年間で増加傾向であることが報告されています。 ピロリ菌の再発を考える場合に、①再燃(さいねん)、②再感染、③再発という3つの用語があります。

再燃(さいねん) 除菌後にピロリ菌が残存しているのに、 除菌判定時に陰性と判定され(偽陰性)、
その後のピロリ菌検査で陽性(再陽性化)と判定されること
再感染 除菌後にピロリ菌は完全に消失し、
その後、新たにピロリ菌に感染すること
再発 再燃と再感染を併せたもの
(再発 = 再燃 + 再感染)

除菌治療の際に注意が必要なのは再燃(さいねん)です。再燃の原因として、除菌の判定に問題がある場合があります。
除菌判定の時期、内服状況、除菌の判定方法の不備などが原因で、除菌が不完全となることで再陽性化してしまいます。
除菌判定は、除菌薬の服薬終了後4週間以上空けてから行います。
胃薬(PPI、ガストローム)などの除菌判定に影響を及ぼす可能性のある薬剤は、4週間以上休薬する必要があります。
また、上述した「除菌の注意点」を参考にして、適切なピロリ菌除菌治療を行うことが大切です。

ご両親がピロリ菌に感染していた場合は、必ず1度はピロリ菌の検査を受けるようにしましょう。
ピロリ菌が無事に除菌できた後は、萎縮した粘膜が少しずつ治っていきます。
しかし、完全に萎縮が治るまでには、年単位・10年単位の期間がかかるといわれています。
除菌が成功しても、萎縮した粘膜からは胃がんができやすいですので、年に1回程度、定期的に胃内視鏡検査を受けるようにしましょう。

参考文献:

胃と腸アトラスⅠ 上部消化管 第2版 医学書院

内視鏡診断のプロセスと疾患別内視鏡像-上部消化管 改定第4版 日本メディカルセンター

日本ヘリコバクター学会 H.pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版
https://www.jshr.jp/medical/journal/file/guideline2016.pdf

日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2020 (改訂第3版)
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/syoukasei2020.pdf

日本ヘリコバクター学会 H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版Q&A
https://www.jshr.jp/medical/guideline/question.html

日本消化器病学会 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A一覧
https://www.jsge.or.jp/member/shikkan_qa/helicobacter_pylori_qa

日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌から胃を守れ!
https://www.jshr.jp/citizen/info/index.html

日本小児栄養消化器肝臓学会 小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症  診療と管理ガイドライン2018 (改訂2版)
https://www.jspghan.org/images/helicobacter_guideline2018.pdf

日本消化器病学会 患者さんと家族のための消化性潰瘍ガイドブック
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/02_kaiyou.pdf

明治 乳酸菌研究最前線 乳酸菌OLL2716株試験結果(ピロリ菌)
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/oll2716/03/

Kudo Y. "Changes in halitosis value before and after Helicobacter pylori eradication: A single-institutional prospective study". J Gastroenterol Hepatol. 2022; 37(5): 928-932.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35324036/